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プロトハウスの失敗と成功

 プロトハウスという名前で一般の建主が家づくりをするのをコーディネー
トする仕組みをスタートさせるに際して、私が描いたシナリオはまさにプロ
トハウス型だった。
 プロトハウスとは「原型」「原形」を意味するPROTOTYPEと「住宅」を
指すHOUSEをくっつけた造語だが、この造語の指すように、「プロトタイプ
からはじまる家づくり」を当初のコンセプトとしたのである。
 それは、簡単に言えば、建築家が考えた住宅の原形を多数用意しておいて、
建主はそのプロトタイプの中から気に入ったプランを選び、それをカスタマ
イズしていくことで、自分の理想の住宅を建てようとしたわけだ。
 このプロトタイププラン(プロトハウスプラン)の発表用に『ProtoHouse』
という雑誌まで発行し、「あの建築家へのオーダーブック」と称して誌上プ
レゼンテーションしたのである。この雑誌は全国の有名書店に直接配本した
が反響は大きかった。特に都市型のハイセンスな書店では平積みして販売さ
れ完売することも多かった。
 人気のあるプロトハウスプランもあった。単純な箱形というよりは、おそ
らくは感じがよくなるだろうと想像できる中庭を設けたコートハウスに人気
があった。建築家の中にはかなり力を入れてこのプロトハウスプランを企画
してくれる人もいた。
 が、しかし、残念なことにこのプロトハウスプランが、そのままのデザイ
ン、またはカスタマイズした上でも建築されることはなかった。
 折からの建築家住宅ブームで問い合わせも多く、実際の家づくりコーディ
ネートも年を追うごとに増えていったのだが、プロトハウスプランは建たな
かったのである。
 これが、プロトハウスの失敗だった。
 だが同時に、それが事業としてのプロトハウスの成功だった。
 雑誌やインターネットを見て相談にやってくる人はいずれも純粋な方が多
く、その人々の住宅が続々建っていったのである。
 ただ、それらの住宅がすべて、完全なる自由設計の家だったというだけの
ことなのだ。
 プロトタイプという提案を叩き台にすれば理解促進ができて効率的な家づ
くりができるだろうというのが私の想像だったのだが、家を建てたいと願う
人はそれぞれ細かな願いを心の中に抱いており、それを、プロトタイプとい
う叩き台でまずは受け止めるなんてことは、ほとんど不可能に近かった、と
その当時、一つの現象として私は理解したのだった。
 これが、プロトハウスの失敗と成功である。このような失敗と成功を経験
しながら、私は今までに200棟以上の住宅をコーディネートしてきた。そこ
には数多くの示唆が含まれていた。最初は完璧なくらいに“偉大に見えた”建
築家の実像も見えてきた。この間に私は「本当にあった家づくりのコワ〜イ
話」という本を書いたが、その中でも“安易に建築家を選ぶことの危険性”に
言及したり、重層構造をしたハウジングメーカーの欠点などもレポートした。
 九州大学と連携した調査では建築家や工務店、素材メーカーに対するオー
ディエンスを交えた座談会形式のヒアリングに続き、今までにプロトハウス
のコーディネートで住宅を建てた建主にもQOLアンケート調査を行った。さ
らに最近になるとこれから実際に家を建てる建主と建築家のワークショップ
を行い、設計プロセスにおけるそれぞれの本音をリサーチした。
 このような学術的な研究分析を行うことで、今まで直感的に感じていた建
主の本当のニーズも見えてきた。
 新しく発見できたニーズをどう活かすか。これが現状のテーマとなったの
である。

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             家づくり相性診断

by yawaraka-house | 2008-05-22 18:26

第一章 建築家住宅の反省と対策

 このコーナーでは、これからの時代にふさわしい家づくりの仕組みについ
てやわらかな提案を行っていこうと考えている。
 そこでまずプロトハウス事務局として今までに何を行い、どのような反省
と成果があったのか、そこから書いていかなければならないと思う。題して
「プロトハウスの失敗と成功」というタイトルで書くことになるが、なにし
ろ今いろんな仕組みづくりにチャレンジしているので、同時速報的なことも
その合間に入れないと、最新の情報が古くなってしまうのでそれはトピック
ス的なレポートとして挿入したい。
 で、昨日は神戸に居た。
f0168167_1462898.jpg


 この写真を見たら六甲山にでも登ってはったん? なんて関西人ならば訊
くところだろうが、ここは屋根の上。足下に生えているのは、どこからとも
なく飛んできた種から芽生えた草花たちである。

 設計したのは「草屋根の住宅」を建てることで名前が知れた神戸の建築家
前田由利さん。昨日はそのご自宅にうかがって、さっそく草屋根となった屋
上に上がらせていただいたのだった。
「日本は土があるから草木が育つ。それを生かさないなんてもったいないで
すよ〜」
 草屋根に立って前田さんはそう言った。

 前田さんが草屋根を手がけることになったのは、このご自宅を設計したの
が発端で、狭い敷地の上に自宅と事務所を組入れていくと3階の最上階に子
供たちの部屋が来るので、そこが暑くならないようにと、それこそ手作り感
覚で創意工夫をしたのが始まりとのこと。10年前は、今のように屋上緑化や
防水の技術も一般化していなかったので、まず木造の屋根に土を乗せるとい
うことに協力的な屋根材のメーカ−がなく、知り合いの工事業者に頼んで防水
工事をしたのだという。

 遠くから観ていると小さな草屋根に見え、そこに登るハシゴも急な傾斜で
かかっているように見えたので、高所恐怖症の私には、おそらく登れないだ
ろうと諦めながらもハシゴの下に行くと、意外にも体が自動的に反応し、す
いすいと草屋根に登ることができた。で、まずもって気持ちいい!! その
一言に尽きる!!! 足下にやわらかな地面を感じ、白や黄色や紫色の可憐
な花たちと力強い雑草を見ていると、小高い山の上に居るような気持ちにな
ってくる。
f0168167_1481858.jpgf0168167_149061.jpg
「お隣もこんな感じの山のような家になっていたら素敵だと思いませんか〜」
 前田さんの声が風のように耳に流れ込んでくる。
「そうですよね、うちはこんな花が咲いてますよ〜。お宅はどんなですか〜?
なんて会話をお隣同士の屋根の上でしたりして〜」
 私の言葉も風のように流れていく。
 
 前田さんのご自宅のある兵庫県御影に行ったのは、今進めている「地域ス
タイルの家」の打合せのためだが、これはこのコーナーの後半で紹介するこ
とになる、これからの家づくりシステムの具体的なアイデアでもある。
 昨日は神戸の地で2つの「地域スタイルの家」の打合せを行ったのだが、
いずれも建築家と工務店が連携した新しい家づくりシステムの元、今までの
建築家住宅とは異なる新しい生活者視点を入れたエコ&デザイン住宅という
提案となっている。建築家と工務店の連携もB&D(ビルダー&デザイナー)
といって建築家のスキルの中でも意匠設計という点に重点を置き、工務店は
施工スキルに重点を置いた。

 「地域スタイルの家」の詳しいことはコチラで確認願いたいが、前田さん
の設計した草屋根に登って、こんな住宅がいろんな場所に建てば面白いこと
になるだろうなあと素直に思った。実験計測結果でもカラーベスト屋根に比
べこの草屋根の(夏場の)熱の侵入割合が21分の1ということが分ったとい
う。つまり省エネ住宅であるわけだ。その先に、屋上に花の咲く小山のよう
な家に住み極力エアコンは使わなくてすむ暮らしが見えてくる。その家の名
前を何と呼ぼう? 実はもうすでに考えている。でもその発表はいずれのお
楽しみ! みんなで知恵を出し合って、日本の家づくりに新風を吹き込みた
い。

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             家づくり相性診断

by yawaraka-house | 2008-05-16 14:04

はじめに


 「いい家」についての著作物は、数多く出版されている。すべてを読んだ
わけではないので断言はできないが、その手の多くは、自分たちが信念を持
って提案できる住宅づくりのシステムなり機能なりがいかに優秀であるかを
謳った内容のはずである。かく言う私も2003年に「スローハウジングで思
い通りの家を建てる」という本を書き、いろいろな家づくりの方法があるが、
建築家との家づくりこそが、デザインの自由度や完成度からしても理想的で
あり、その建築家を選ぶにはこんな実践的なポイントがあります! と熱く
語った。

 それから5年が経過した今、新たな「家づくりのためのガイドブック」を
書く必要性を感じている。
 というのも、日本の家づくりシステムとして法が定めている建築基準法が
さらなる混沌の中に突入しており、日本の家づくりの根本を見ることさえし
ないその法律の元で、本当にいい家を建てたいと願ってやまない人々が迷走
をする明日が、すぐそこに待ち構えていると予測できるのだ。

 昭和25年に建築士法が制定されるまでは、棟梁が描いた絵図面を元にこの
国の住宅は建築されていた。それまでは棟梁と建主が打合せを行った結果、
建主の希望にそくした間取りを持った住宅が造られていた。どっしりと重い
瓦屋根や茅葺き屋根を乗せた、切妻や入母屋といった昔ながらの意匠をした
住宅が建てられていたのだ。がっちりと太い梁や柱を使い伝統工法の仕口や
継手で組まれた民家は、今でも古民家として再生されるくらいしっかりと造
られていた。
 ただその後にやってくる高度経済成長の副産物として登場した欠陥住宅が
世間を騒がせる辺りから、家づくりの事情が変わってきた。
 法的な規制がかかるようになってきたのである。しかも夢の欠片さえもな
い規制、が。

 私はこの段階での行政の想像力のなさが、その後の日本の家づくり迷走を
引き起こした元凶だと思っている。その段階で、日本の住宅とはどうあるべ
きかをもっと真剣に想像し、その道の専門家(先人)たちの知恵に習うとい
う謙虚さがあれば、シックハウス問題も耐震偽装問題も起らなかったに違い
ない。極論すれば、そう考えている。

 この国の法律はおそらくは性悪説に基づいているのだと思う。または、国
の文化を守り育むという志を持たない小市民が寄せ集めの知識を使って創造
しているのだろう。私は、現場で大工に的確な指示を出し建築家からも図面
作成に際して相談をされる棟梁を知っているが、日本の軸組工法のディテー
ルなどを彼からヒアリングし、それを元に建てた民家を使って耐震性能の実
物大実験をしたい衝動に駆られることがある。机の上で建築基準法を書いて
いる人々はきっとそんな衝動に駆られることはないのだろう。彼らにとって
は、その工務店の棟梁は信用に足らないだろうし、そんな実験をしたところ
で、それがなにを産み出すのか、彼らは想像できないのだ。

 現行の建築基準法は、欠陥住宅を出さないための“締め付けのルール”である。
平成21年10月1日から施行される住宅瑕疵担保履行法も、その延長の上で登
場してきた。この法律は新築住宅の請負人や売主に資力確保措置を義務づけ
るものである。耐震偽装問題で悪名を売ったマンションメーカーがあったが、
あのような企業が再び登場したとして、この義務に従ってその企業が保険に
加入または保証金を供託しておくことで、いざという時でも犠牲者を出さな
いようにしようというわけだ。
 供託金の額がすごい! 供給戸数1戸〜10戸の場合は200万円×戸数+1
800万円。年間50戸以上を建設する地場中堅工務店ならば過去10年間に瑕疵
担保責任を負う戸数から計算しなければならず、従って年間60戸供給すると
して60万円×600戸(年間60戸×10年間)+4000万円=40000万円の供託金を
法務局などに預けておかなければならない。これは事実上不可能な数字である。
 そこでもう一つの資力確保措置(だいたいこの呼び方からして上から目線で
ある)が、保険への加入となるのだが、ここら辺りから、「待てよ、もしかし
て・・・」と想像できた人は勘が鋭い! 
 そうなのである。来年10月以降に建つであろう住宅はすべて、住宅瑕疵担保
責任保険に加入しておかなければならない、ということなのだ。そこで問題。
もしその保険を契約をする保険法人(国の指定)が保険を下ろさなかったらど
うなるのか? その家は果たして建つのだろうか? いやいや、建つとすれば
どんな家は建ってどんな家は建たなくて、いやそもそも保険を通過して建つの
だろうか? えっ、もしかしたら建築家の思いっきり大胆な設計をした住宅は
保険が下りない? じゃー、どうすればいいの〜! という事態が想像できる
のである。

 面白いことに、この新しい締め付けルールのことを建築家に話したら、ほと
んどの人がこの法律の名前さえ知らず、中には呑気にこう答える建築家もいた。
「そんな瑕疵保証なんて、今までみたいにその保証を使わなかったらいいんだ
ろ?」
 このルールに選択の余地なし。こうやって、国はますますマイナス思考で穴
埋め的ルールづくりに走り、住宅性能保証などの数値化に強いハウスメーカー
や大手地場ビルダーだけが着々とその制度の傘の下での戦闘準備をはじめ、腕
はあっても資力のない弱小ビルダーや情報に疎い建築家たちは刀を抜く前に時
代の闇討ち(と言っても一応の告示はしてあるのだが・・)に合うのだろう。

 今はそんな時代である。
 この5年の間に、家づくりを巡る状況は熾烈な変化を遂げたのである。
 だからこそ、この時代を生き抜いていく建築家と工務店へ向けて、そしてそ
の先の家づくりで満足度の高い住宅に住むことになってほしい未来の建主に向
けて、私はメッセージを送りたい。
 今こそ、この住宅業界全体を見渡した上での見識と想像力、そして連携が求
められているのだ、と。
 やわらかに専門連携する家づくりの時代が、これからはじまる。

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by yawaraka-house | 2008-05-13 10:34

日本の家づくりが大変です

 さて、今回からはじまる新コーナー。
 日本の家づくりについて、その現状と打開策を模索しようとスタート
しました。
 その在るべき姿を柔軟に(やわらかく)想像&創造してみましょう、と
いうコーナーですから、これからの家づくりのご参考にしていただければ
と思います。
 初回は、「この国の家づくりはどこを目指しているのか」について。
 序章的なことをまとめてみます。来週月曜日に原稿を掲載しますので、
しばしお待ちください。

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by yawaraka-house | 2008-05-08 12:01