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ユーザー参加型家づくりが増えてきた

建主の満足度は、どこに在るのか? 僕らは、ずっとその答えを探している。建主と

言っても、多種多様だ。「基本的には住めればいい。大切なのは、ある程度の広さと

機能のある住宅が幾らで建つかだ」と、商品を金銭感覚で見定めるように〝家を買う

〟人もいれば、「できればデザインと居住性能が両立した家を建てたい」と、自分の

理想の家を追求したいと願う人もいる。この前者と後者が、夫婦のこともある。夫婦

は元々は赤の他人。価値観だって、基本的には異なるケースが多い。面白いのは、こ

のような夫婦のケースで、前者が後者に〝成長していく〟ことがしばしばあることだ。

最初は他人事のような話だった「建築家にデザインを依頼する」ということが、実際

に建築家に会ってプロジェクトが進行しはじめると、自分たちの思いがデザインされ

ていくことに次第に興味が湧き、楽しくなっていくのだ。態度は以前のまま〝しぶし

ぶ〟なのに、建築家がデザインした図面を見る体が前傾姿勢になっている建主を見る

とき、僕は心がウキウキしてくる。「あっ、スイッチが入ったな」と僕は得心する。

最近、「自分の家のデザインを自分で行いたい」と願い出る建主の家づくりが2例同

時に進んでいる。一つは、設計経験のあるセミプロで、一つは設計に興味のある素人。

いずれも、最初から「自分で基本図面を描きたいのですが、その後の実施図面と設計

監理をお願いできる建築家の方がいらっしゃるでしょうか?」という依頼内容だった。

建築家の多くは、自分が設計した建物を自分の作品と思っていて、すべての図面を自

分で描きたいと考えているし、しかもその中でも一番大切な基本図面を建主に描いて

もらうことを快く受け入れるケースは少ない、と前置きした後で、僕は「そういうこ

とに対応してくれる建築家もいます」と答えた。実際に数名の顔が思い浮かんだから

だが、心の片隅で「そうだな、こんな思いを抱いている建主も少なくないのだろう」
と確信していた。

このような「自分の家のデザインを自分で行いたい」という建主との家づくりを「ユー

ザー参加型家づくり」と、僕らは呼んでいる。絵心のある人の多くは、こんな風に、

「自分の家はこんなデザインがいいなあ」と想像していたとしてもちっとも不思議な

ことではない。

このようなケースでは、作品テイストや設計ポリシーが〝ある一定の評価を受けてい

る〟建築家とのコラボレーションは難しい。そのような建築家は、こんなケースには

〝自分に設計依頼する意味がない〟と感じるからだ。オリジナルの想像こそが自分の

存在理由である、とその建築家は考える。では、どんな建築家と相性がいいのかと言

うと、建主が描きたがっている基本図面の中には自分には思いつかないアイデアやヒ

ントがいっぱい詰まっていると素直に感じるピュアな精神の持ち主である建築家とな

らば上手く事が運ぶだろう、と僕は感じている。もちろん、夢と現実との間を几帳面

なラインで描き図面を作成していくスキルがないことには話にならない。つまり、建

築士としての正確な技能が必要なのは当然。その上で、建主の求める感性を敏感に感

じ取り、それが施工に反映するように設計監理をするセンスが求められる。

「自分の家のデザインを自分で行いたい」と願う建主は、これからますます増えてい

くことだろう。なぜなら、自分らしい暮しを実現したいと願う建主は確実に増えてい

るし、そんな人は「自分でデザインする」ことが、自分の満足度に直結していること

を、よく理解しているからだ。

このようなユーザー参加型デザインを実現する方法の一つにワークショップがある。

心を真っ白にして、その上に自分たちの本当の願いやニーズを発見し組み上げていく

には、日常とは違った視点で、心を開放し、深層心理を探る必要があるからだ。これ

は僕がアドバイザーとして参加しているインクルーシブデザイン研究所が基本的に用

いる方法なので、これまでに何度もワークショップを伴った家づくりを実現してきた。

ワークショップでは、建主は素人なりに図面を描き住宅の模型を造ることになる。あ

まり仲が良さそうには見えないご夫婦も、一つの模型を造るために〝しぶしぶ〟な感

じで作業に没頭し、最後には二人の作品である我家住宅作品の模型やコンセプトシー

トを前にして、やや緊張ぎみに見事なプレゼンテーションを行う。僕は、そんなご夫

婦を何組も見てきた。

残念なことは、まだこんな建主主義のユーザー参加型家づくりに積極的に取組む建築

家が少ないことだが、それでも、現在進行している二組の家づくりがそうであるよう

に、きちんと応えてくれる建築家も存在する。こんなときに我々家づくりコーディネー

ターが肝に銘じなければならないのは、家づくりの方法はまさに多様性の中にあると

いうこと。建主の思いを実現する方法も多彩でいいのだ、ということだ。

建主の満足度は、どこに在るのか? その答えの一つが、ユーザー参加型家づくりだ。

自分でデザインするのだから、どんな形になろうが愛着が湧く。もちろん、セミプロ

であろうが素人であろうが、一般的な建主は、住宅の温熱環境の造り方や安心な構造

を構築するにはどうすればいいのかなど、住宅の基本とも言える要素に関してはそれ

ほど多くの知識も、ましてや経験など持ち合わせてはいない。そこで建築家や、我々

家づくりコーディネーターの豊かなアドバイスが必要になってくる。プロトハウス事

務局では、このようなユーザーからの質問、大歓迎!!きらりと煌めく建主のアイデ

アに、ぜひ出会いたい。

by yawaraka-house | 2012-07-20 14:31