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生活者参加型デザイン


建主が建築家に住宅の設計を依頼する際、最も気をつけなければなら

ないのはお互いの相性の問題です。

いくらテイストが気に入っていても、ちゃんと会話ができないようで

は情報が共有できず、「いい家づくり」はできません。

以前こんな失敗がありました。

建主は画家さんで、寒い地域に家を建てるので「寒くない家を設計す

るのが得意な建築家」というリクエストに対し、私は、それを最も得

意とする建築家を紹介したのですが、途中で話がうまく噛み合なくな

ってこの家づくりは暗礁に乗り上げたのです。

原因は、相性の悪さでした。画家さんは高齢で芸術家のプライドとと

もにもちろん絵心があるわけで「こんな家にしたいと思うイメージ」が

あったのですが、建築家も自信家で自分の仕事にプライドと誇りを持

っており、お互い合い譲らない部分が、終にはぶつかり合ってしまっ

たのです。

ここで注意しなければならないのは、画家には絵心があり住宅のイメー

ジもあった。著名な方ですから、実は有名な建築家もお友達にいらし

た、という事実です。もし相性が良ければ、この事実に対しソフトな

アプローチができたはずです。

そのアプローチの一つに、「生活者参加型デザイン」があります。

実際にその家に暮らすことになる生活者に、その家のデザイン作業に

参加してもらおうというのです。

これは私が取組んでいるインクルーシブデザインの手法でもあります。

ワークショップに参加していただき、生活者自らにニーズや気づきを

誘発させ、本当に建てたい家のイメージを頭の中に描いてもらい、そ

のビジュアライズを建築家に手伝ってもらうのです。

以前行った調査でも、家を建てた方はこの参加意識が高ければ高い程、

出来上がったデザインに対しての満足度も高いということが解りました。

いわゆる自己実現ですが、それが画家ともなれば一般の方の何倍以上も

その欲求は高かったのだと思います。

この場合、建築家は「家を寒くしない機能面」に注力し、デザインに関

してはもっと画家の内面の絵をヒアリングしてそのイメージをもらい、

それをビジュアライズするお手伝いに徹すれば良かったのだと思います。

しかし相性の悪さがそれを妨げたのです。

私がそのミスマッチに気づけば良かったのですが、その頃はまだこんな

知識の持ち合わせがなかったので、的確なアドバイスができませんでし

た。

現在、私は九州大学大学院の平井准教授とともに『インクルーシブデザ

イン研究所』をスタートさせようとしており、そこで家づくりと生活者

参加型デザインをより理想的に融合させようとしています。

生活者参加型デザイン_f0168167_15154492.jpg

これはワークショップの一場面。バルーンを使って住宅のゾーニングを
するのですが、手を動かしているのはなんと建主さんです!

この研究はここ数年の間既に推進しているので、その進め方にもノウハ

ウができてきました。今となれば、画家さんや映画監督さんなど、絵心

のある方の家づくりもうまくコーディネートできると思いますので、も

し心当たりがおありの方はお尋ねください。

いや〜家づくりって難しいものです。


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by yawaraka-house | 2009-02-26 15:08